いくつもの“良い”を打ち消す1つの“ダメ”の影響力

COLUMN /

blog ひと言 No.29
■良いところよりもどうしても目についてしまうこと

 「言うだけならば、誰でもできるんですよねーー。」

 先日、ある企業からご相談をいただき、お打ち合わせの機会がありました。非常に前向きな内容のご相談で、これまでのコンサルティングにプラスアルファの要素が必要な内容。大きなプレッシャーを感じる反面、これまでとは違った視点も必要とされ、やりがいがありそうな案件です。

 打ち合わせの場で、詳細をお伺いしていると、対象となる経営層の方の良い点、悪い点の話しになりました。ここでは抽象的な言い方になりますが、一般的に他者の「良くないところ」「気になるところ」は、「良いところ」より目につきやすいものです。この場では、良くないところ、気になるところを「敢えて言ってください」とお願いしたところ、そんなに苦労する様子なくネガティブなことはいくつも出てきました。それに比べると、「良いところ」は、すぐに出てくるのは1つ2つ程度です。

 この場合、オフィシャルな視点で、ご本人がその場にいないという前提。要は本人への遠慮や配慮はなし、ということですが、そうなると、どうしても「良い」よりも「悪い」ことに目がいってしまいます。「良い」ことが3つあっても、「悪い」ことが1つあれば、そちらへ引っ張られてしまう。それだけ「悪い」ことの影響力が大きいのです。

 これはあくまでも、ビジネスシーンで適しているか、その置かれた立場での良し悪しであって、その人の性格や人間性についてではないことは、おことわりしておきます。

■言いっぱなしにしない、感じさせないこと

 ここで、最初に出てきたコメントに戻ります。

「言うだけならば、誰でもできるんですよね」というのは、この「悪い」点について。

 つまり、自分が目に付いたこと、気になること、を言うだけならば簡単で誰でもできること。でも、それだけでは、言ったら、言いっぱなしの状態です。当然ながら、これでは何の解決にもならない。重要なのは、ここから先であって、それをプロに求めたい、ということでした。

 悪いことの指摘はいくらでもできる。「じゃあ、具体的にどうすればいい?」と言われると、明確な回答ができないーー。言いっぱなし、なのです。

 指摘だけして、「後は自分で考えなさい」というやり方ももちろんあります。自分の頭で考えさせることは確かに大事なことです。ビジネスシーンでの上司と部下の関係では、問題があるのであれば、それを指摘することは必要。

 そのとき、“言いっぱなし”にならない、そう感じさせない配慮が必要になります。「こうしなさい」という押し付けでなく、「こういうやり方も一案」といった提示もときには必要。要は、言いにくいことは言った後のフォローのほうが大切ということです。

 言うだけならば誰でもできるーーーそう、そこで具体策が提示できるかどうか。それがプロかどうかの違い、と言われるとその通りです。人の上に立つ立場であれば、“言いっぱなし”にしない、これも求められる1つのことといえそうです。


この記事の執筆者

yamakawa midori
山川碧子(やまかわ みどり)

株式会社プライムイメージ代表/AICI国際イメージコンサルタント。2006年からビジネスパーソンの印象管理・印象マネジメント®を中心にサポートしています。著書『4分5秒で話は決まる~ビジネス成功のための印象戦略』。お仕事のご依頼はこちらからお願いします。