気象庁の口元が見える透明マスクのストーリー

COLUMN /

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マスクをしていても唇の動きや表情が伝わるには

 自然災害が発生すると、緊急会見で速報を伝える気象庁。その会見時につけていた透明のマスクが話題になりました。地震が続いた10月からのことです。

 目から下を透明シートで覆われた“口元が見えるマスク”

 口元は透明なので見えることは見えますが、宇宙服を創造させるようなとてもインパクトある見た目です。

 マスクをすると、顔の半分以上が見えないため、表情豊かな人であっても緊急会見の緊迫感を「目」だけで伝えるには無理があります。聴覚障害者からの「口元が見たい」という要望を受けて、唇の動きや表情がよく伝わるように、このマスクが使われるようになったとのことです。 

 私自身、気象庁のこうした緊急会見担当者の方へ、「信頼できる発信者になる」ためのレクチャーをやらせてもらっており、今年3月にも新任の方々へ実施しました。

 実際に気象庁の方々を前にすると思うのは、本当に真摯な姿勢で会見にのぞんでいるということです。「正確に情報を伝える」という使命感、そのため「絶対に間違えてはいけない!」という思いで会見をしています。

 多くの記者の方々を前にするので、マスクは必須となりますが、質疑応答では「どんなマスクがいいか?」「眼鏡がくもらないためには?」などマスク対応の質問があったことを思い出しました。

 このレクチャー時には、透明マスクは未発売。ですが、視聴者からの声に耳を傾け、省庁でありながら、前例がないことを言い訳にせず、良いものをスピーディに採用する姿勢は、「国民を守る」という強い意識の表れなのでしょう。

 よく考えてみれば、民間企業でも広がりきれていない「印象マネジメント」の重要さを理解し、数年前から研修を採用していることでも、良い意味での意外性があります。

 

一社員の声から社長が動いて商品化

 このインパクトあるマスクですが、ユニ・チャームから「顔がみえマスク(1480円込)」という商品名で2021年4月から発売しています。

 マスク最大手のユニ・チャームですが、その開発にもストーリーがありました。

 ユニ・チャームの社長は、社員の誕生日に祝福メールを送る慣習があるそうです。コロナ禍のなか、聴覚障害のある社員が送った御礼メールが、透明マスクを開発するきっかけとなったといいます。

 マスク生活が続くなか、相手の言っていることがわかりにくく、仕事のやりとりに苦労していること。それを御礼メールに書いたところ、社長は聴覚障害者に役立つマスクの開発を指示。そして、2021年春に商品化して発売するに至りました。

 このマスクは、透明フィルム部分とマスク部分があるため、手作りであり量産がむずかしいため、会社としては「ビジネス的には考えていない」。その一方でさらに使い勝手を良くするとのことです。

 「ソーシャルインクルージョン(*)」を掲げる企業らしい発想!

 作ったストーリーも、実際に使っている側のストーリーも、今の時代、求められている支え合う考え方のもとにあったのですね。話題の商品の舞台裏の良い話でした。

 

 (*)シーシャルインクルージョン

すべての人が健康で文化的な生活を送れるように、一人ひとりを社会の一員として取り込み、互いに支え合う考え方のこと。

 

             asahi.com より写真