なぜ、この人はずっとしゃべっているのか?

COLUMN /

No.203_パターン4

■ずっとこの人がしゃべっているという記憶

 初対面のとき、「ずっーとしゃべっている」という印象だけが残る人がいました。

 そのとき、同席していたのは7~8人。話しの内容よりも、ずっとこの人がしゃべっていた、ということばかりが記憶に残りました。

 一人でずっと話している、というと、自分のことばかり話す自己顕示欲が高い人をイメージします。

 ところが彼の場合、あれだけ話しているにも関わらず、「オレが、オレが~」という自己主張の強さや、「俺の話を聞け!」という仕切りたがる様子が感じられません。

 この彼、とても良い仕事をするようで、同席していた仕事仲間から絶大な信頼をされている様子。周りの人がしゃべりすぎの彼をうっとおしがることもなく、場がなごんでいるのが不思議な気もしました。

 半年後、再び会う機会があり、この2回目で彼の印象が大きく変わりました。

 その理由は、「ずっーとしゃべっている」彼なりのこだわりを知ったからです。

 

■話す努力をしてまでなくそうとするもの

 本来の彼は、逆に質問ばかりする人だということ。縁あって同じ場にいるのだから、相手のことを知りたい、という思いが強いということです。これには周りの人も同意していたので自分一人の思い込みではないようです。

 では、そんな彼が、なぜ、あそこまで「ずっとしゃべっている人」になるのか

 その理由は、沈黙の時間がないようにしているーーー

 誰も話さない沈黙の時間、シーンと静まることが苦手。それがないように、自分がひたすら話すようにしてしまう。意外なことに話す努力を自分なりにしていたのです。

 沈黙が嫌い、苦手という人が、その沈黙をなくすために話しをするのはよくあること。

 でも、「沈黙」や「間」という言葉のない時間を良くないと思うのが間違い。苦手意識があっても、この言葉のない時間は否定するものではありません。

 ちょっと発想を転換してみるとーーー。

 本来、彼が質問したがり屋なのだとしたら、もし、沈黙になりそう~と思ったら、自分が話すばかりでなく、誰かに質問を自分から振ること! これだけで大きく違います。

 隣の人に「そう思いません?」と同意を求める、「ねっ!」と相づちを促すなど。

 つまり他の人に話すバトンを渡すイメージです。一人でいつまでも走り続けるのは、リレーでもトークでもキツイものですから。

 スピーチの指導をするときにも、何も言わない「間(ま)」をうまく使いましょう、と言っています。話を変えるとき、雰囲気を変えたいとき、言葉のない時間が味方になってくれます。

 沈黙が嫌い、苦手という思いから、沈黙の時間に小休止くらいのつもりでいれば、話して側も聞き手側も、余計な気づかいをしなくてもよくなりますね。

 自分なりの努力をして、ずっとしゃべっている人。その理由を知ったことで違うものが見えました。


この記事の執筆者

yamakawa midori
山川碧子(やまかわ みどり)

株式会社プライムイメージ代表/AICI国際イメージコンサルタント。2006年からビジネスパーソンの印象管理・印象マネジメント®を中心にサポートしています。著書『4分5秒で話は決まる~ビジネス成功のための印象戦略』。お仕事のご依頼はこちらからお願いします。