コロナ禍でガマンを強いられた世代の嗜好や発想は?

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強いられたガマンから生まれる思考や発想は?

 コロナ禍でも時間は流れ、季節は巡っていきます。

 みんながガマンを強いられたこの1年。職業人としていろいろな思いや苦労を味わった年でしたが、仕事とは少し離れた目線で感じたことがあります。

 コロナが騒がれ始めた2020年年初。その後、決まっていた仕事が次々と流れ、そこでやっと自分事としてこのウィルスの影響力の大きさを痛感しました。

 それから1年―――。

 今も誰もが何かしらガマンをしています。やりたいことをやる、会いたい人と会う、行きたい所へ行く、老若男女問わず、みんながみんなガマンをして、その限界を感じてもいる春です。

 この時期に高校生、大学生だった20歳前後だった若者たちは、今後の成長・成熟過程で、このコロナでガマンを強いられた毎日が、どう影響していくのでしょうか?

 自分のことを思い返してみても20歳前後は、人生で最も自由であり、毎日を楽しんでいた時期でした。すべてが自分の時間であり、友人との時間を充実させて、家にはほとんどいなかったような気がします。

 そんな典型的な学生の日常を過ごす自由さえ奪ってしまったコロナ禍。

 学校にも行かれず、友人とも会えず、一人暮らしであれば孤独と隣り合わせの毎日。新センター試験の初年度となる受験生の大きな不安は、想像以上のものだったはずです。

 実際に周りでも、留学先である米大学からの帰国、交換留学の中止、就職活動の制限、進路の希望していない方向転換、アスリート系では世界大会や全国大会の中止や活動の制限など、人生を大きく左右するであろう出来事に直面し、例年とは違ったレベルの苦労話が次々と耳に入ってきていました。

 今後、いつになるかはわかりませんが、こうした経験は平常時に戻ったとき、彼らの思考や発想にどのような影響が出てくるのだろうか、とも考えてしまいました。

 

最も自由で活発な時期に強いられたガマンの行方

 ガマンといえば「マシュマロ・テスト」を思い出しました。

 「マシュマロ・テスト」とは、スタンフォード大の心理学者、ミシェル・ワルタ教授が行った行動科学の有名なテスト。幼少期の子供の成長過程を見るためのものでしたが、マシュマロを食べるのをガマンできた子、できなかった子の半世紀にわたって追跡調査をして、自制心(=ガマン)と成功の関連を調べています。

 その後の再現テストなどで親の経済状況の影響を指摘されましたが、ガマンできた子のほうが成績も優秀で、社会的な成功しているという結果が出ていました。

 コロナ禍におけるさまざまなガマン。幼少期ではなく、人生で最も活発な活動期ともいえる20歳前後の若者たちにガマンを強いるこの状況。今後、追跡調査をしていくと、これまでの何でも自由にどこにでも行けて、好きなことができた時期の学生たちとは何か違った結果が出てくるのではないか、と思います。

 ガマンをすれば良いと言っているわけではありません。自己責任で強いられるガマンでなく、状況的に最も自由で活動的な時期にガマンを強いられて過ごさざるを得なかった若者たち。

 将来、こうした人たちは、自由を満喫したバブル世代はもちろん、制限のなかった学生時代を過ごした層とは何か違った傾向が出てくるような気がしてなりません。それはネガティブなものも考えられますが、想像もしないようなポジティブな結果の可能性が高いのではないか、というのは私の希望的観測です。

 マショマロ・テストでガマンできた子が成功へとつながる確率が高かったのであれば、このコロナ禍でガマンをし尽くしたこの層は、成功という言葉では言い尽くせない何か新たな結果を出してくれることに大きな期待をします。

 制限はありますが、気分も新たに新しい一歩を踏み出すときです。

 2021年新年度、入学、進級、入社のみなさんへ、心からおめでとうございます。

 

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