「印象操作」とあえて口にしてはいけない理由

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blog ひと言 No.5

■配慮することは当然であり、必須なこと

「一体、どこで覚えたのか――?」 

 という声も出ており、この週末に話題になっていたのが、安倍首相が国会(2017530)で何度も口にした「印象操作」という言葉です。 

 日頃から、「印象」をテーマに仕事をしているため、私自身、「印象」とつくニュースや記事には敏感になります。しかし、今回、国のトップが、この言葉を公に口にするのは、大変よろしくないと改めて感じました。

 なぜならば、政治家はその代表的な職業ともいえますが、人前に出る立場・仕事であるならば、当然ながら「印象操作」は自らがしていること、するべきことです。  企業や集団のトップとして、いかに最良最適な「印象」を大衆や相手にもってもらえるか、そのために服装をはじめとした外見、立ち居振る舞いや表情、話し方など、「印象」に関わるすべての面で、配慮することは当然であり、必須なことでもあります。

  安倍首相の「印象操作されている」という発言がなぜ問題なのかと言えば、自らが操作をしなければいけない、この「印象」を、「相手から、周りから操作をされている――」と、公言してしまっていることで、自ら「印象」をマネジメント(管理)できていないと、認めていることになるからです。 

■ 印象操作」はバックヤードで戦略的に

 日頃から「印象マネジメント」の重要性を訴える立場としては、トップが公で口にしていけない言葉の1つとして、「印象操作」をあげます。繰り返しますが、「印象操作」はすでに自らが行っていることであり、あえて公の場で口にするべきことでないことなのです。

  「誰に教わったのか?」という疑問の声が出たようですが、仮にブレーンから「望ましくない方向に印象操作をされている」との分析結果があったとしても、それをそのまま公の場で自らが「印象操作をされた」と言うのは、大きな間違いだと個人的には考えます。ブレーンのどなたかが、発言の前にストップをかけてあげられなかったのだろうか、とさえ感じてしまいます。 

 「印象操作」はバックヤードで、あくまでもご自身の戦略とするものです。

 公の場で口にすること、それも望ましくないかたちで相手から受けていること、として使うのは、控えるべきでないのでしょうか?  ――と、今回、安倍首相が悪い例となって教えてくれたのが、「印象操作」という言葉の使い方でした。これは企業トップやリーダー層の方には、とても参考になるはずです。

  操作されているというトップの姿も望ましくありませんが、聞いている方も、何かに操られているようで、心地良い言葉ではありません。「競合の○○社に、印象操作されているんだ!」と叫ぶ社長への社員の目は冷めていきそうですし、信頼は薄らぎそうです。

 また、「印象操作!印象操作!」と繰り返す社長の姿は、自分の姿をより良くするために社員に向かっても印象操作をしていると認めているようにも聞こえてしまいます。  今回で一気に認知度が高まり、少しの間、流行ってしまいそうな気もする「印象操作」という言葉ですが、みなさんは使い方を改めて注意してくださいね。

  「印象操作」はバックヤードで戦略的に使うもの。 決して公の場で、「印象操作」を連呼してはいけません――。


この記事の執筆者

yamakawa midori
山川碧子(やまかわ みどり)

株式会社プライムイメージ代表/AICI国際イメージコンサルタント。2006年からビジネスパーソンの印象管理・印象マネジメント®を中心にサポートしています。著書『4分5秒で話は決まる~ビジネス成功のための印象戦略』。お仕事のご依頼はこちらからお願いします。